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NEXT 【完結】
第57章 春愁
無意識に、右手の指輪をなでていることに気づく。

羚汰に貰った、可愛いリボン型の指輪がキラキラと光を放っている。


クリスマスのあの屋上で、羚汰は来年の事、未来のことまで考えてくれていた。
その気持ちがすごく嬉しかった。

でも、稜はまだそこまで未来のことは考えられない。

考えられないというか、想像つかない。

羚汰と付き合っている事実でさえ、妄想ではなく、事実なんだと思えてきたところだからだ。

今はまだ、羚汰が言ってくれた未来のことが、言葉は悪いが、夢物語のように思えてしまう。

いつかは覚めてしまいそう。


ついそう考えて、慌てて頭を横に振る。


羚汰と離れてしまって、ネガティブな気持ちが取り巻いているのを感じた。


「...ちょっと稜、いい加減、お箸並べるとか手伝いなさいよ」

いつまでもソファでボーっとしている稜に母親がぷりぷりしている。

「んー。なんか気持ち悪いから、ちょっと横になってくる」

そう言い残し、リビングから出ようとする。
母親が手を拭きながらそんな稜を追いかける。

「ちょっと、大丈夫なの。胃薬飲んだら」

「うーん。大丈夫」

「晩御飯もう出来るのにー」

「...ごめん」


しつこくついてくる母親を振り切るようにして部屋に入った稜は、スマホを握りしめて、ベッドに横になる。

確認したが、やはり羚汰からの連絡はない。

狭いベッドで何度も寝返りを打つ。


羚汰の声が聞きたい。

そういえば、ここ二日ほど声を聞いていない。


そう思ったが、かける勇気は出てこなかった。


そのままベッドの中でもごもごしているうちに、眠りについてしまった。



羚汰の声が聞けたのは、それから何日も先だった。

久しぶりに声が聞けて、名前を呼ばれるだけで、涙が出そうになる。

「どうしたの?」

優しく心配をする声が、稜の心を温かくする。

電波がイマイチよくないとかで、テレビ電話ではなく普通の通話でよかった。

きっと今の顔は見せれたものではない。

「ううん。何でもないよ。...声が聞けて、嬉しい」

「俺も。ごめん。本当にここんところ忙しくて」

移動が結構多いらしく、何かにつけてグループ本社がある首都を経由して行き来するらしい。

週末も、稜が思っていた所にはいなかったらしい。

有希子の勧め通り押し掛けていたら、すれ違っただろう。
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