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第60章 Downstairs
結局、その日羚汰はサークルの飲み会で連れ回されたようで、遅くに帰ってきた。

朝方気がついたら布団に入ってきていたので、はっきりとした時間はわからない。

日曜日は日曜日で、バイト先の女のコが辞めるとかで、送別会があったらしく、二日続けて遅くなった。

土日忙しかったのと、飲み会続きで、月曜の朝は流石にぐったりしていた。

「羚汰、大丈夫?」

「んー。今日は、ゆっくり寝とく」

お店が定休日で、まだ大学も始まっていないので、1日完璧な休みだ。

「うん。お水、ここ置いとくね」

「...仕事何時に終わる?」

仕事に出かけようと寝室のドアを開けたところで声がかかる。

「?この時期忙しいから、遅くなるかも。木曜のようなことはないけど。どうしたの?」

「迎えに行くよ。ホワイトデーのお返しに、どこかレストランでも行こう」

「えっ」

てっきりこの前、帰ってきた時のホテルのあれこれが、ホワイトデーなのかと思っていたので驚いてしまう。

リッチなホテルに、ルームサービス。
平日とはいえ、そこそこしたはずだ。

どう返事していいものかとまどっていると、不審に思った羚汰がしんどそうに体を起こしてくる。

「何?予定でもあった?」

「ううん。そうじゃないけど...」

怪訝な顔をしている羚汰が誤解していそうで、素直にこの前のホテルのがホワイトデーだと思っていたことを伝える。

「違うし。あれは...まあ、早く帰れたから、ね」

もごもごと何やら照れている。

「で、レストラン、行くでしょ。何食べたい?」

食べたいものー。

羚汰のバイト先のラコルテに久しく行ってない。
マルゲリータが格別で、すごく好きなのだが、羚汰と付き合ってからはお店に行けていない。
でも、どのみち明日は定休日だし。

この状態の羚汰に作って欲しいとは頼めない。

その他に食べたいものと言ったら...。

「じゃあ...、なかやま」

「えっ」

今度は羚汰が驚く番だ。

「なかやまって、あのなかやま??」

「うん。暖かくなってきたから、おでん、食べ収めじゃない?」

怪訝そうな羚汰が、益々額に力を入れる。

「稜、なんかさ、遠慮とかしてんの?」

「してないよ」

「...そう。ならいいけど」

否定したのに、なんだか羚汰が不機嫌なままだ。
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