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第64章 異変
お昼ご飯いらない、みたいなこと言っていたので心配していたけど。
食べられたのなら、そこまでじゃないのかもしれない。

稜は、いつもの如く弁当ガラを取り出して洗い。
羚汰用に取っておいたお弁当の材料を、適当に炒めて晩御飯にする。

いつもはソファのテーブルで食べるのだが、そのテーブルにはまだ羚汰の荷物が広がっていて。
付箋がいっぱいついてるし、プリントも挟まっていたりするので、本や辞書が動かせずにいる。

なので、カウンターのスツールに座って晩御飯だ。

明日は、弁当を食べてくれるのかな。

普段の羚汰は気持ちがいいくらい、稜が作ったおにぎりを食べてくれる。
それが嬉しくて、作るのが習慣になってきた。

ネットで簡単に、美味しそうな料理、それでいてパパッと出来る料理を検索出来るようになったのもあるかもしれない。
料理自体はそんなに得意ではないのだが、レパートリーが増えつつあって、次第に楽しくなってきていた。

風邪によさそうなものって何かな。

早く良くなって欲しい。

そう思って、食べながらスマホで検索していると、玄関で物音がする。


え?ひょっとして羚汰??

玄関に向かおうとすると、部屋のドアのところで羚汰と鉢合わせする。

「羚汰!?どうしたの?」

「...バイト休んだ。てか、帰れって言われた」

その声は明らかにかれていて、咳もかなりしんどそうだ。
確かに、その様子では接客できそうにない。

「ええっ。そんなに?」

羚汰はそのままソファに向かって、そこへ体を投げ出す。

「こんなになるとは...」

ぶつぶつ言いながら、咳を繰り返す。

明らかに症状は重くなっている。

「羚汰、そこじゃなくて、ベッドで寝たほうが...」

「いいよ。うつすし」

布団をかぶろうとする羚汰の手を掴もうとすると、思いっきり払われた。

その動作にびっくりして、止まってしまう。

流石に羚汰も気づいて、気まずそうにしている。

「ごめん。...でも、稜にソファで寝てもらうわけにいかないから」

咳き込みながら言い訳をする羚汰に、ショックがまだ拭えない稜は、どう返事をしていいものか頭の中がぐるぐるする。

「でも、風邪引いてるのに...。ベッドに行って!」

「だから...」

羚汰の眉間に深くシワが寄っている。

「じゃあ、私は...私は、自分の部屋で寝るから」
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