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第64章 異変
喉が乾いていたのだろう。
差し出したペットボトルの水を音を立てて飲む。

「ホントに?じゃ、どっちが好き?」

ますます訳が分からない。
どっちが好きとか聞かれても。
どちらも大切な友達だ。

受け取ったペットボトルをベッドサイドに置く。

「羚汰、もう寝たほうがー」

熱で少し混乱でもしているー。そう思った。

「やだ。...有希子さんは高校からで、千夏さんは...」

咳き込みながらもそんな話を始めた羚汰の意図がわからない。

「大学からの友だちだよ。ねぇ、布団かぶって?」

起き上がったままの羚汰をベッドに寝かす。

なんとか横になった羚汰に布団をかける。

「ずっと昔から仲がいいんだよね?」

「そうね。どちらももう10年以上の付き合いになるねー。って、羚汰。風邪が治ったらなんでも質問に答えるから、今は寝よ?ね?」

トントンと布団の上から叩いていた手を、羚汰が握ってきた。

「やだ。だって俺が寝たら、あっちの部屋に行ってしまうんでしょ」

潤んだ瞳が、稜を見つめる。

「...羚汰が大人しく寝るなら、このままここにいる」

ベッドに腰掛けていたが、布団の上、羚汰の横に寝転ぶ。

「風邪がうつるよ」

そう言いながら顔を背けているが、羚汰が少し嬉しそうに見えた。

そうよ。風邪がうってもいい。
もう別々に寝るのなんて嫌だ。

「いいよ。うつっても、羚汰の風邪でしょ」

布団をめくって、羚汰の横に潜り込む。
羚汰が体を奥にやろうとしてか背中を向けるので、そこに抱きついた。
2人はいつもと逆の位置だ。

「うふふ。すごく温かい」

「うつっても知らないよ。稜...、おりぇわふ」

何かまたしゃべり出そうとする羚汰の口を、後ろから手を伸ばして押さえた。

「だめ!おしゃべりするなら、あっちの部屋行くから」

「...うん」

位置は逆だが、久しぶりに一緒の布団に入るのが稜は嬉しかった。

咳をする羚汰の背中を撫でる。

「ごめ...」

「早く治して。そしたら、いっぱい話しよ?」

また羚汰の背中に抱きつく。

かすかに背中に振動がしたので、羚汰が頷いたのだろう。

稜も目を閉じた。

しばらくすると、羚汰が寝息を立てはじめたので、稜も久しぶりに安心して眠りについた。
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