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NEXT 【完結】
第70章 実家
「よかった」

ほっとした。
昨日から思いついていて、言う機会を伺っていたのだ。

おにぎりをカバンに詰め、出かける用意をする。

「地元の街をブラブラするの、ちょっと夢だったんだー」

夢というと大袈裟かもしれないが。
初カレが大学生になってからの稜にとって、高校生カツプルで地元のデートスポットをうろつくのが密かに憧れだったのだ。

「高校時代、彼氏いなかったの?1人も??」

玄関先で見送られながら、羚汰にきょとんとした顔で言われて、グサリと胸に突き刺さる。

今時の高校生とは違い、稜の頃はクラスの3割ぐらいしか彼氏持ちはいなかったー。
ドラマや漫画の世界と違って、現実はそんなものだと思うのだがー。
稜は、3年間ずっと漏れなく残り7割の方で。

きっとモテモテだった羚汰と違って、地味な高校生活だった。

「...だって、塾の先生のこと好きだったし」

「マジか!えー。話の続きが気になんだけど!」

靴を履いてドアを開けかけた稜を遮り、ドアを閉める。

「続きって、特にないよ。完全に片思いで、誕生日プレゼントとかバレンタインとかあげたけど相手にされなかったし。ちょっと!遅れちゃう」

振り返った稜の唇が塞がれる。

「ヤベぇ。自分で聞いときながら、すげぇ嫉妬するわ」

「憧れていただけで、彼氏じゃないってば。って、お願い離して。本当に遅れちゃう」

身動きできないほどホールドされていて、カバンも落としそうだ。

羚汰の手が顎から回って口の両側をぎゅっと押しつぶす。

「帰ったら全部聞き出すから」

「おおげはだよう」

大袈裟だよ。
それにモテモテだっただろう羚汰のほうが気になるし!

でも、こんな昔の話で嫉妬してくれている羚汰が可愛くも思える。

ひとにらみした羚汰が手を離したので、稜から近づいて素早くチュッとする。

「羚汰が早く帰ってきたらね」

そう言い切る前に、また羚汰の顔が近づいてきて、同時に顎を開かされ舌が絡められる。

「んふっ...んっ...」

濃厚に舌が重なり、唾液が行き交う。
クラクラするような深い口づけに、力が抜けてゆく。

「...ふぁ。...ん...」

羚汰唇ががやっと離れると、今度は指がその場所をなぞる。

「グロス取れちゃったね」

「...もう」


それから慌てて駅に向かったが、あまり記憶がないまま会社に着いた。


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