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NEXT 【完結】
第71章 宿
それまでに羚汰の人となりをよく見ていたからか、2人で話をしたのがよかったのか。
いろんな効力があって、なんとか許してもらえた感が強い。

特に、羚汰の幼少期の寂しかった思い出が決め手となった気がした。

「知らなかった。羚汰がそんな寂しい子ども時代だったなんて」

今の明るくてポジティブな羚汰からは想像つかない。
兄弟の仲も良さそうだったし。
おじいさんのお祝いであんなに人が集まってて。

「あー。あれね...」

前のめりだった羚汰が、バツが悪そうに座り直している。

嫌な事を思い出させてしまったのだろうか。

羚汰の手を握る。

これからは、今まで以上に一緒に過ごしてー。

「ごめん。ちょーっと誇張した、かな」

「コチョウ?」

言われている意味が分からず、ぽかんとしてしまう。

「嘘ではないんだけど。少し大袈裟に話した、かも。うん」

羚汰の母親は、確かに留学生相手のボランティアをしていた。
それは、出かけての事も多かったが、大概は自宅に招いて料理をもてなしたり。
近場の観光地に連れていったりと。
ひっきりなしに大勢の留学生が訪ねてきていたのだ。
年の離れた兄姉が家を出ると、空き部屋に留学生をホームステイさせてもいた。

羚汰も部活のない日はその手伝いをされられた。
そのおかげで英語は堪能にならざるを得なかったし。
日本語を教える代わりに、英語だけでなく他の国の文化も教わった。
だから、高校時分に大学を選ぶ時は自然とそちら方面の英語の仕事につくだろうと、地元の英文科を選んだのだ。

羚汰の母親はそんなボランティアが高じて、数年前に仲間とNPO法人を立ち上げて活動の幅をぐっと広げている。

「だから、親に構って貰えてなかったのは本当なんだけど。稜が思ってる寂しい、ってのとはちょっと違うかなー」

ははっと羚汰が笑っている。

「心配したのにー」

「ごめん。だって、あそこではあー言ったほうが、許して貰えるかなってさ」

確かにあの話は決め手だった。
だから余計に2人の脳裏には焼き付いているだろう。

「いつかバレるよ?」

「あー。まぁ、それは、その時」

にへらっと羚汰が笑っている。

反対にぶすっとした稜に、また羚汰が擦り寄る。

「あ、でも。あれは本当だよ」

今度は羚汰が稜の手を握る番だ。

「稜が部屋で待ってくれてるのが凄く嬉しいってやつ」
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