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第9章 協力
リョウは慣れた手つきで、エスプレッソの準備を始めている。
コーヒー豆のいい匂いが広がる。

「あ、座ってて。散らかってるけど」

「...ありがと」

恐る恐る赤いソファーの上に座る。

隣には大きな勉強机があり、洋書が溢れていた。
ソファーの向かいは大きな本棚で、そこにも本がいっぱい並んでいる。
大学の教材もあったが、ほとんどが洋書だ。

医学部って、こんなに洋書読むのかな。

「カフェラテだよね?」

「え?うん」

「オッケー」

今度は、ミルクの泡立てる音が広がる。

「すごい慣れた手つきだね」

「ははっ。普段何杯も入れてるから。高崎サンたちが来る土日のランチはピザ釜のとこいるけど、平日はホールがメインだからね。コーヒーも入れるよ」

「そうなんだ。夜行かないから」

「今度、デートで来てよ」

そう言われてドキリとする。

あ、そっか。私には彼氏がいることになってる。
相当激しいセックスをする...。

「...そうだね。でも、何かの記念日とかじゃないと、ちょっと」

「そっか」

リョウがカップを、持って近付いてくる。

「はい。熱いから、ここ置くね」

そう言って、テーブルに置いた。自分のものその横に置いて、そのままリョウはテーブルの横面の床に座る。

「ありがと...かわいい!...ネコ?」

カフェラテのミルクにはラテアートが書いてあった。
が、イマイチ何なのかわからない。

「えー、ドラ〇もんなんだけど、見えない?」

「うっそ!」

「くそー、見えないか〜。失敗したぁ」

「そっちは?」

「ダメ、こっちはもっと失敗なんだ」

「えー、見せてよ」

体を回転させてカップを遠ざけていたが、稜が覗き込んだので観念して見せる。
もうリョウが少し飲んで崩れていて、あまりわからない。

「これは、何?」

「...コ〇助?」

「えーーー!」

「だから失敗なんだって!」

笑い転げる稜。

「ちょ、溢れるから」

「いっつも、お客さんにそんなの出してるの?」

笑いながら稜が聞く。

「俺が書くのは無難なやつ。ハートとか。だから、練習しようと思って。...飲まないの?」

ちょっと怒ったように、スネたようにリョウが聞いてきた。

「飲むよ。...笑ってごめんね」

「別に...」

こうやって、拗ねる様子はまだまだ子供っぽい。

「美味しい!!」
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