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朏の断片
第2章 #1
一度気がつくと、よく目に入るようになる。これまでも彼女が度々そこにいたのかはわからないが、次の練習でもその次の時も彼女は来ていた。
メンバーの子の家族でもなさそうだし、すごい試合とかしてるわけでもないし、何を見に来ているかますます謎だ。まだ子ども達が集まる前の準備をしてる時からベンチに座って見ていることもあった。
片桐は思い切って声をかけた。
「いつもそこで見てますね」
彼女はちょっと驚いたあと、ふんわりと笑った。目元がさらに垂れ目になる。
「可愛いですよねー、小さい子達って。ポテポテボール蹴ってるの見たら何だか癒されちゃってー」
彼女のそのふんわり感に片桐の心臓は跳ねたが、平静を装い会話を続けた。
「そうですか。僕コーチの片桐深幸です。深い幸せで深幸」
「上田です。」
さすがに下の名前は教えてもらえなかった。貴女を見ていると僕も癒されます、とか言わなくて正解だっただろう。