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朏の断片
第2章 #1


「上田さん……良かったら僕とデートしませんか」


思い切りすぎた片桐の言葉に、上田は一瞬身を硬くして顔を赤らめた。


「あの、……ごめんなさい。私帰りますっ」


ペコッと頭を下げて小走りに逃げていく。呆気なくフラれてしまった。そのまま病院の建ち並ぶほうへ駆けていく彼女の後ろ姿を未練がましく眺めていたらチラホラとまた子ども達が集まって来た。

気を取り直して練習に励んでいるうちに時間は流れ、夕刻に一人後片付けが残っている。


「バイバイコーチ!」

「おう。気をつけて帰れよ」


自転車に乗ってクモノコを散らすように解散した小学生と、母親に手を引かれ歩いて帰る幼児。今日も無事にやり終えた。

川の水面は夕陽を受けて黄金に煌めく。もうすぐ夕闇がやって来る。片桐は簡易式のゴールポストを担いで車へ足を向けた。


「あれ、」


もう誰もいないと思った場所に人影があった。サラサラとロングヘアーがなびいている。


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