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朏の断片
第5章 #5
「いっぱい泣いてええから、マサキはマサキのまま俺と生きろや」
泣きながらベッドに押し付け背中にキスを落としていくと、泣き声は狂ったような喘ぎ声にまじって何を言っているかわからない。
ゆっくりと体を沈めると互いに苦痛の呻きと涙がもれた。哀しみと絶望が絡み付いて快楽を高めていく。
真っ暗な朔から数えて
三日目の晩に
初めて顔を出す
あの朏は
昼間は掠れて
とても見えないが
夜にはまるで
ナイフのように
細く尖って輝く
満ちるまで
幾度でも
昼も夜も
この光で満たそう
いつの日にか
それは完全な
丸い姿を
空に浮かべるだろう
ありのままの姿を
握り合った手がガチガチに固まったまま目を覚ます朝に。全身の痛みで身動きもろくにとれない。
「ぅ……あ、おは…よ」
「ん。……な、マサキ。お前どこも行くなよ」
「うん?……何が?」
「何が『何が?』やねん、すっとぼけもええ加減に――」
はた、と思い出したように突然上田の目が変わった。
「何や……どないしたん?」
「手紙。美希からユキ宛に」
脱ぎ散らかした服のポケットからクシャクシャになった手紙を出して皺を伸ばす。
「……俺に?」