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第11章 父

「あぁ…美由紀のご両親に、何てお詫びすればいいのだろう。

この桜茶を見て…あの時の約束を鮮明に思い出したよ。

美由紀のご両親に、反対されるのも覚悟して、挨拶しに行った時、美由紀とお腹の子を一生大事すると約束して、何とか結婚を許して貰ったんだった。

反対されると思ったのに…

私みたいな男に…桜茶を振舞ってくれて…喜んでくれた。

…あぁ〜…なのに…

私は…一人逃げ出してしまった。

会社からは、パワハラされ
妻が仕事に充実しているのを妬み
子供が私から離れていくのが恨めしかった。

もう何の為に、働いているのか
分からなくなってた。

虚しくて
虚しくて
自分が嫌で
愚痴ってばかりで
前に進めない
溺れていくような毎日…

深く沈んで
前が見えなくて
何もかもが嫌になってしまった。

勝手な男だな…。
何もかもが、煩わしくて
一人になりたいと
自由にしてもらった。

一人になって
何もしたくなくて
ダラリと寝てるだけなのに
腹が減るんだ。

あぁ〜…
一人で飯を作って
一人で食べた…。

一人で食べる飯はまずかった。

本当に一人きりなんだって思ったら
また、虚しくて
泣けてきた。

美由紀は忙しく働いて、疲れて片づけしないで寝ちゃったかなとか

新菜は、一人でご飯を食べたくなくて彼氏と食べていたのかなとか

家族のことばかり、考えてた。

私は、何がしたかったんだろう…。