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第8章 真実の行方

「最悪の答えしか、想像できなかったのか…。
何故俺が信じられなかった？
……もしかして、他に何かあったとか？」


「他に？…」


あたしは心臓が抉られるように苦しくなり、ギュウッと目を瞑った。

嫌な汗が吹き出て、目眩を感じる。

嫌だ…あの日の事は、思い出したくない。


「新菜…どうした？顔色が悪いぞ。大丈夫か？」


隆盛は、子供をあやすように優しくポンポンと背中を撫で、あたしを胸の中に包みこんでくれた。


「何があった？」


隆盛は、心の中まで見透かすような目で見つめる。

「……ん？」


無言で心の中を踏み込む催促に、あたしは途方に暮れてしまう。

結局、隆盛はあたしを裏切ってなどいなかったのだ。

あの日の事を清算する決断をするべきだろう…。

隆盛に抱かれた温もりに、背中を後押しされている気がした。

小さな子供にでも戻ったみたいだ。
あたしは、そんな風に抱かれていたかったのかもしれない。


「あたしには、小さい頃抱っこされた記憶がないわ。きっと愛されて無かったのね…。」

「新菜…。」



あたしは決死の想いで、あの思い出したくもない記憶を手繰りよせることにした…。


「父が…ね…

父が…あたしの誕生日に出ていったの。

雪が…降ってて…

凄く寒い…朝だった…。


両親が、仲が悪いのは分かってた。

でも…あたしは

『行かないで！』って

引き止めたの。

そしたら父は

『もう、解放してくれ。
お前が生まれたから、仕方なく結婚し我慢して養ってきたんだ。
お前も、18歳ならもう一人でやっていけるだろ？
もう、勘弁してくれ！苦しいんだ。
すまない、新菜…元気でな。』


あたしは…知らなかった…。

自分が生まれたのが

父には迷惑でしか無かったなんて。」