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第10章 挨拶

「 我が義母ながら、痛烈だな…悪い。あの人…悪気はないんだ。」


隆盛は、申し訳なさそうに目を伏せた。


「 ううん…いいの。あたし、誰かに叱られたかったの。下手な同情よりね…。誰かに 辛辣に罵倒されることで罰を受けたかった。

でも、隆盛のお義母さんは最後にこう言ったの。

『 貴方の可哀想な赤ちゃんが、親孝行できるのは…この事を忘れず、貴方が今度こそ幸せになることよ。

貴方が、この事で不幸せになるなら貴方の赤ちゃんはいつ迄も報われないわ。』

こんな優しい事を言われて、あたしは声をあげて泣いちゃった。

それこそ、声も枯れるくらい。

産んであげられなかった可哀想なあたしの子を想って、頭が割れそうになるくらい泣きつくしたの。

そんなあたしを、お義母さんは抱き締めて背中をポンポンしながらついててくれて、ようやく眠りにつくことが出来た。

隆盛のお義母さん、言葉はキツいけど…本当は、すごく優しい人だよね。

キツイ言葉だったけど、心に響いた…。

あの言葉があったから、頑張れたんだ。」



…本当に、なんて素敵な人なんだろう。

あたしでは、一緒に泣くことは出来ても、未来を明るく照らしてあげることは出来ないだろう。



「あとさ、隆盛…あの時はゴメンね。
お義母さん、言ってたよ…

『 貴方の何倍も隆盛にお説教したから。愚息が申し訳ないことをしました。謝って済む事ではありませんが…ごめんなさいねって…。』

だから、お義母さんには本当の事話したの。治療費も、必ず返しますって…隆盛には黙ってろって言われたけどね。

沢山、叱られたでしょ？
…黙っててくれたんだよね。
隆盛のせいじゃないのに…。」


隆盛は、頭をボリボリと掻きながら


「 もう忘れたよ…。
優花が教えてたんだな。
義母が謝ってくれたんだ。

『ごめんなさい。貴方がお友達を庇うなんて…。
嘘は駄目だけど…。あの娘を見たら分かるわ。大切なお友達なのね。ちゃんと相談してくれたら良かったのに…。』

それからだよ…

俺が、義母とちゃんと向き合うようになったの。

何てこと無かった。

俺が、意地をはって義母の事を受け入れなかっただけで、義母は素敵な人だった。口は悪りぃけどな…。」