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俺だけの女の子。
第9章 馨の兄貴
……無理だったと。

確かに突っ走りやすい性格だし、こうと決めたら人の意見なんか聞かないから、自分がしたくない格好はしない主義だったのかもしれない。
でもそのおかげで俺は馨と会えたし、仲良くもなれたのだから悪いことばっかじゃないと思う。

「あ、あの……ファーストキスがレモンの味っていうのもお兄さんたちが教えたんですよね?」
「……ファーストキス?ああ、馨が小学生の時に冗談で教えたやつ?え、何、あいつ今でもそう思ってたの?」
「海斗さー、そういう変なこと馨に教えるのやめなよねー」
「大丈夫だって。もうレモンの味なんかしねえって分かったんだろ?」

海斗兄がいたずらっ子のような笑みを浮かべながら俺に聞いたので、頷いておいた。
それでも陸兄は何やらぶつぶつと愚痴っている。

「しゃーねーなー、馨のことは何とか殴られずに済むよう言ってやるからさ。高梨のこととか他のことはお前で何とかしろよ?」
「はい、ありがとうございます」

その後俺はコーヒーを一杯おごってもらって外へ出た。
つまりは馨の初体験の相手を他の二人も見ておきたかったらしい。
俺は海斗兄の「何とかする」には期待が持てないまま、明日の馨への言い訳を考えながら家路に着いた。



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