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第11章 『あなた』

それは私と彼の間でよくしていた嫌みなジョークのつもりだったが、彼は「ごめん」と謝ってきた。

彼の口から聞かされた三年前の出来事と今日までのことは驚きに溢れていた。
三年前、彼が姿を消したのは親の借金が原因だった。
実家が小さな工場であることは聞いていたが、それが不景気で倒産してしまったらしい。
お父さんはなんとか建て直そうと倒産間際あれこれ手を尽くしたが、結果としてそれが仇になったらしい。
事業の転換などを考えて新しく入れた設備は借金を増やす結果しかもたらさなかった。
銀行からは融資してもらえない為、危ない金融業者からも借りてしまっていた。
返済できなければ何をされるか分からない。
親がダメなら息子。そしてその知り合いにまで手を伸ばすことで有名ないわゆるヤミ金が相手だった。

だから聡志も三年前誰にも告げずに姿を消したのだった。