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あなたの面影
第11章 『あなた』
「もう大丈夫だから」
そう言って彼を抱き締めてあげたかった。
けど、私の体は聡志に掴まれたことで震えてしまっていた。

「ごめん。瑞波……俺、やっぱり……行くね……」

聡志の目は寂しそうに笑っていた。
きっと震えている私を見て、勘違いをしてしまったんだろう。
突然変わってしまった自分に、私が怯えていると。

違う。
私が震えているのは、そんなことじゃない……
精神が磨耗しても、やつれてしまっても、聡志は聡志だ。

私が震えてしまったのは、きっと……

一仁さんじゃない人に手首を掴まれたからだ……

「行かないでよっ……」

このまま彼とここで別れを告げれば何もなかったことに出来る。
聡志未だに帰ってこないと永遠に一仁さんに嘘もつける。

なのに私は聡志を引き留めてしまう。

「俺はきっと瑞波を傷つけてしまう……だからもう……」

聡志は苦しそうに言葉を詰まらせた。

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