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あなたの面影
第11章 『あなた』
私の行動を冷静に見ている人がいたらきっと馬鹿だと思うに違いない。
失踪して三年間行方の知れなかった男より、今愛する人を大切にすべきだ、と。
それは私だって分かっている。頭の中では、分かっていた。
けれど忘れ難い人というのは誰にでもいるはずだ。
理屈じゃなく、ただ心から好きな人。
私にとって聡志はその存在だった。

三年間待ち続けたその人が帰ってきてくれたのに、今は恋人がいるからさようなら、と言えるほど私は強くないし、賢くもない。

結局私は一仁さんにメールを返せずトーストの朝食を作る。
その間も聡志は『もういかなくっちゃ』と相変わらず繰り返した。
もはや聞こえない振りで朝食を並べ、食後は散歩に誘った。
躊躇いながらも聡志は徐々にすぐに帰ることを諦めてくれたようだった。

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