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仔猫と狼
第16章 こぼれ落ちる

片岡に許可をもらい冷たい水で顔を洗う。
水の冷たさに頭が冷える。
昨日、片付けるときに勝手に漁ったためタオルなどの位置はわかる。
顔を拭くために新たなタオルを取り出し、顔を埋める。
タオルからは少し甘い香りがする。
この後のすべきことを整理するために、顔を埋めたまま肺いっぱいに酸素を入れ、ゆっくりと吐き出す。
この後は片岡を病院に連れて行って、その後片岡に時間をもらってゆっくり話をしよう。
いままで、マネージャーである山田にも話したことのない、俺の本音を。
あいつが聞きたくないなら話さなきゃいい。
離れないでくれたあいつのために、聞く権利のあるあいつに。
気持ちも頭もすっきり整理が出来たところで、玄関に向かった。
靴を履き終わったところで、片岡が少し慌てた様子できた。
「これからタクシーを呼ぶから、顔くらい洗ってこい。」
そう言うと、片岡は慌てすぎて忘れていたようで恥ずかしそうに洗面所に向かっていった。

