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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第11章 《巻の壱―予期せぬ災難―》
 誠吉が訝しむように見つめてくる。
「名前だよ、名前。何せ五日もの間、意識がなかったんだ。お前の家族が探し回ってるんじゃないのか? とりあえず番所には届けておいたが、ここのところ特に家出人やゆく方知れずの届け出は出てはいねえってことだ」
 泉水の声が震えた。
「思い―出せない」
「ええッ?」
 男が素っ頓狂な声を上げた。
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