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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第12章 《巻の弐―待ち人―》
 暗闇の向こうから自分を呼ぶ人が誰なのか。泉水には判らない。自分の名前、住んでいた場所さえ思い出せないのだ。でも、自分を呼び続けている人が、かつて自分にとって大切な存在であったことだけは判る。
 ならば、泉水は帰りたい、その大切な人の許に、自分を待ち続けているだろう人の傍に帰りたいと思わずにはおれない。
「そうか」
 誠吉は肩を落とした。その陽に灼けた貌には落胆の色が濃く浮かんでいる。
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