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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
泉水は小首を傾げて、何とか思い出そうとした。短い静寂が流れる。
更に記憶の糸を手繰り寄せてみる。
―駄目だ、思い出せない。いつさっきまで、あれほど鮮明に色々な場面を思い浮かべることができたのに、もう何も浮かんでこない。もつれた糸が解けるように、するすると記憶がほどけて一本の糸になりそうな気がしたのに、また、どこかで絡まってしまったようだ。
「あ―」
泉水は唇を噛みしめた。情けなさと悔しさで、涙が溢れそうになる。