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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
立ち止まれば、誠吉が追いかけてきて連れ戻されそうで、泉水は息の続く限り走った。
あれほど降っていた雨は、いつしか止んでいた。
雨上がりの夜は涼やかであった。
いかほど走ったであろうか、流石に息が上がり走れなくなったところで、立ち止まった。荒い息を吐きながら周囲を改めて見回すと、小さな橋が手前に見えた。どうやら、この辺りは静かなお屋敷町のようだ。
武家屋敷の塀が人気のない小路沿いにずっと続いている。