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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
だが、泰雅の妻としてこの屋敷に帰ってきたからには、この簪はもう身につけない方が良いのかもしれない。泰雅は何も言わないけれど、勘が鋭いあの男のことゆえ、見慣れぬこの簪についてはとうに気付いているに違いない。泉水がいつまでも誠吉の作った簪を髪に挿しているのを見るのは泰雅も内心は面白くはないだろう。
こうやって榊原の屋敷に帰ってきてみると、泉水は町外れの長屋で誠吉と共に過ごした日々が何か遠い昔のように思える。