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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》
 もう、二度と逢うことはないだろうか。あれほどの腕を持つ男だ、いずれは名の通った職人になることだろう。
 この簪を見ていると、何故か、あの淋しげに笑う若い錺職人の貌が心をよぎる。
 泉水は夕顔の簪を手に握りしめた。
「お方さま」
 時橋の声に、泉水は振り向く。
 この忠実無比の乳母は帰ってきた泉水を抱きしめて、周囲をはばかりもせず、おいおいと声を上げて泣いた。
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