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Only you……
第1章 麻都 1

片道愛車で1時間。本日も遠路はるばる我が国へ入国――。

コツコツと足音を響かせながら、俺のシマへと向かう。

「架上副社長、おはようございます。今日もお早いですね」

りんに声をかけられた。こいつも毎朝早い。俺は早く帰りたいから、朝早く出社するのだが、りんは俺に付き合わされて早いのだ。俺のスケジュールの管理は、全てりんに任せている。

「ん、おはよう。今日は、まさか、変なお食事会とかないよな?」

オヤジばかりの会に出席など、俺にとっては生き地獄だ。俺が若いのをいいことに、何だかんだと文句を言ったり、いやらしく付きまとってくるヤツが多いからだ。あんな奴等になめられてばかりではいかん! と俺は色々な企画や商品を作ってきたし、これからも作り出していくつもりだ。

おかげ、以前よりは、寄って来るオヤジは減った。が、今度は副社長のくせにバリバリ働く俺の能力を引き抜こうとするやつが現れ始めた。しかし俺には、どうしてもこの会社を辞められない理由がある。それは――。

「おはよう、麻都。それにりん君。いつもご苦労」

偉そうに現れた――事実偉いのだが――背の高い男。こいつがこの会社の社長だ。そして、俺の養父でもあり、俺が会社を辞められない理由でもある人物。

「おはようございます、佐伯社長」

「おはよ」

佐伯 貴正(さえき たかまさ)。佐伯自動車のヘッドにして、俺の育ての親。近年の自動車会社の中でも最大手の社長。

「目上の者に対してタメ口か?」

「俺とおっさんの仲だろ? つーか、いつものことだし」

佐伯はくすりと笑った。そして俺の横を通り過ぎようとして、思い出したように振り返る。

「りん君、透真が来たら、すぐに来るように伝えてくれ」

「分かりました」

透真とは東 透真(あずま とうま)のことだ。佐伯の専属秘書兼恋人。佐伯は完璧なゲイだった。女には勃たないらしい。
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