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Only you……
第1章 麻都 1
「……ただいま」
何の反応も無い。やけに静かだった。とりあえず、居間へと足をのばす。――が、そこにも明の姿はない。寝室にも、俺の部屋にも、キッチンにも、浴室もトイレも探した。そして玄関で……。
「靴が……無い」
明の靴が無かった。確かにここにあったはずの。黒い革の靴が、今は全く持って見当たらないのだ。
あの状態で、明はどこで、何をしようというのか? 気が付くと俺は、家を飛び出していた。
「あきらぁー!!」
俺には、アイツが行きそうな場所なんて、一つも思いつかなかった。特別な思いでもなく、特別な関係でもなかった俺と明。アイツの頭の中なんて、俺には予想もつかない。
夜はもう、そこまでやって来ようとしている。
気温だって下がってくる。
あんなガリガリの体で、どこへたどり着けるというのか?
俺はなんの考えもないまま、走り出した。昨日の俺の行動が、今日の明を追い出す結果になってしまったのだとしたら? 取り返しなつかない、大変なことをしてしまった。俺の大切な明。俺が初めてマジになった相手。いろんな相手と付き合ってきたが、こんなに笑顔が見たいと思った相手は初めてなんだ。俺の前から何の前触れも無く、消えてしまうなんて、そんなことって――。
流れる汗、走りにくい靴に服。そんなものは気にならない。ただ明の体が、そしてなにより心が、心配でならないのだ。