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Only you……
第8章 明 4
2人向かい合ってダイニングテーブルに着き、手を合わせて「いただきます」。最近疲れている麻都のために、ビタミンAとCを多く含む野菜を中心に調理した。なによりもやはり健康第一だろう。ここで体調を崩しては困る。
麻都は好き嫌いが少なく、文句を言いながらも何でも食べるので作りやすかった。それでも、野菜よりは肉派で、今日のメニューにご不満のようだ。
「なんで全体的に緑がかってるの?」
箸の先でピーマンをつつきながら、上目遣いに尋ねてくる。オレはこの目線に弱い。普段は背の高い麻都だから、上目遣いなんて見られない。だから余計にドキドキする。
「麻都の健康のため! さぁ食べて」
オレは白米に白菜の漬物を乗せて口へと運んだ。
珍しく同時に床に入る。巨大なベッドは2人が並んで寝転んでも、余裕たっぷりだった。さすが特注品だけある。スプリングが効いていてマットレスが波打った。
電気を消して、少し経てば目が暗闇に慣れてきた。うっすらと浮かぶ麻都のシルエット。麻都は布団に潜り込もうとはせず、ぼーっと座っていた。
「寝ないの?」
オレは布団から顔だけを覗かせて尋ねた。麻都は振り向かずに小さく「……うん」と呟いた。
暗闇は人を弱くする。オレはそう思う。昼間はあんなに気丈に振舞っていても、やっぱり辛いんだなと再確認させられる。
オレはそっと上半身を起こすと、麻都の広い背中にぴったりとくっ付いた。ぴくんと麻都が力を込める。オレは掌で背中をなぞった。
「オレ、貴正さんが病気とか、正直よく分んない」
腕を麻都の腹に回し、バイクでタンデムするみたいな体勢になる。
「身内が危険とかっていう気持ちは分んない」
額を背中に擦りつる。麻都は黙って聞いていた。
「だから麻都の気持ちは分んない」
「でも! 麻都が悲しそうにしてるのはイヤだから。麻都が悲しんでると、オレも悲しいから!」
顔を上げて叫ぶように訴えた。独りで全てを背負わないでと。独りで苦しまないでと。