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Only you……
第8章 明 4
ルルルルル――。
この頃会議が多いらしく、度々りんさんがうちに電話をしてくれていた。今日もその連絡だろうと思い、味噌汁を作ろうと火を点けていたのを消して受話器を持ち上げた。時間はいつもよりも随分と早かった。
「もしもし?」
『んあ、俺だけど』
「あ、麻都」
りんさんだと思って心なしかトーンを上げていたのが、麻都と分り少し落ちた。
『なんだよその声は。……それより、まだ飯作ってないよな?』
オレはキッチンを振り返り、確認する。
「まだだけど? ご希望あり?」
『今日は外食しない? 早めに帰れるから』
オレは少し考えてから「いいよ」と返事した。
麻都は帰ってから着替えをして、オレにも普段より立派な服を着せた。このまま結婚式に行けそうだと思った。そしてどこから引っ張り出してきたのか、大きな旅行バッグのようなものを1つ仕事部屋から持ってきた。まるで旅行に行くみたいだ。中になにが入っているのかは知らないが、それを車のトランクに詰め込み、オレたちも乗り込んだ。
「ねぇ、今日はどんなところに連れてってくれるの?」
オレはワクワクしながら尋ねた。前にレストランへ行った時は緊張したが、それでも料理は美味しくて、大満足だった。
「んー、綺麗なところだよ」
「オレ、甘い物が食べたい気分……」
胸に手を当てて、「ほぅ」と溜息をついてみる。そんな目を輝かせているオレを見て、麻都は吹き出していた。
車の揺れは心地よく、睡眠不足とは程遠いオレにも睡魔はやってきた。話題も尽き、うつらうつらしていると麻都が「まだかかるから寝てていいぞ」と言ったので、オレは目を閉じた。次に目を開けたときは豪華なご馳走が目の前に連なっているのだろう。