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Only you……
第8章 明 4
男娼時代、オレは一切嬌声を上げなかった。イクこと自体殆どない。オレはただ客の性欲を満たすだけの道具で、マシンであればいいと思っていた。
麻都はオレに声を出すことを求めた。外に出かけることを求めた。名前を呼び合うことを求めた。ウザイと思っていたけど、今思えば嬉しかったんだ。オレという――野沢 明という1人の人間としてみてくれていたから。
「――……!!!……っ」
手の甲からは血の味がした。それでも声を上げるのはいやだった。恥ずかしいから。男がキャーキャー言うのって、気持ち悪いと思うだろうから。
麻都もオレも、もうすでに何も身につけていない。
「あ、きら……明っ」
麻都は何度も名前を呼んでくれた。
そのかすれた声が好き。その優しい声音が好き。
「明ぁ……」
麻都がオレの中心へと手を伸ばし、握り込んだ手を静かに上下させる。
その大きな手が好き。その広い胸が好き。
「はっ……く――……ん」
背が反り返る。麻都がオレを口に含んだのだ。柔らかく、激しく絡みつく舌がもたらすなんともいえない快感。背筋を突き抜けていく。
「―――!!!!!……っ」
オレは肩を震わせながら精を放った。
麻都がゆっくりと顔を上げる。
「……!!」
途端にその顔が曇った。
「な、手、血が出てるだろ?! 我慢してたのか?!」
麻都はオレの手首を掴むと口から引き剥がさせた。ツーっと伝った血液を舐め取る。
オレは涙をこぼした。ぽろぽろと頬を伝ってはシーツを濡らしてゆく。
「だって……」
「我慢しなくていいんだよ! 俺はお前の――明の声が聞きたい」
そんなこと言われても、声を出してしまうのは恥ずかしい。
麻都はオレの手首を開放すると、自分の左手の指をオレの口に差し込んできた。
「んっ??」
麻都はにんまりと笑った。
「痛いから歯、立てるなよ?」
麻都の右手がオレの両足の間を割り、後ろの方へと進んでゆく。その指は、一点に辿り着くと動きを止め、数回撫でるように行き来した。
「はぁ、んっ……」
そして指が、オレの中へと入り込んできた。
「はっ……!!」
口内では麻都の指がオレの犯していた。
「痛くしないから、力は抜いてな?」
指は中でゆっくりと動き始めた。