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Only you……
第1章 麻都 1
「じろじろ見んなよ。さっさと帰れ」

「……嫌だ」

「なんでだよ」

正直、このまま帰ってしまおうかと思った。俺が追い求めていたアイツは、完全に俺を見下していた。わざわざ探して、ここまで追ってきたというのに、この仕打ちはなんだ。虚しさを感じていたのも事実。では、なぜ帰らないかというと、答えは簡単。つまりは――

「いつも言ってるだろ。俺はお前に惚れてるって」

そういうこと。この想いだけは、簡単に消えてくれそうにない。どんな怒りや悲しみにも打ち勝つような、そんな強さを得てしまった想いは。

「くだらない。冗談も休み休み言え」

言いながら、俺の背中を無理やり押し、力ずくで追い出そうとする。俺はそれに対抗する気にならず、ただなされるがままになっていた。

くだらない、か。

俺の気持ちは、アイツにとって、何の価値も無いのだろうか。

「あばよっ!」

俺の背を高級革靴で蹴り、アイツは台詞を吐いた。俺は慌てて振り返る。アイツはまた文句を言おうとしたのか、口を開けた――が、言葉は出てこなかった。というか、見る見る顔色が変わってゆく。恐ろしいものを、見つけてしまったかのように……。

「よう、明くんじゃないの」

「おひさ~って、先週も会ったっけ?」

「どうして昨日はお電話に出なかったのかなぁ~?」

汚い言葉使いで、アイツにじわじわと近寄る3人の男たち。歳は俺と同じくらいだろうか? アイツは近寄られる度に、一歩ずつ後じさりしていく。

こいつら、明にとって、敵なのか?

俺はとっさに、アイツを後ろにかくまうように手をひらいた。男たちの顔つきが変わる。

「何このヒト? 俺等の邪魔しようての?」

「馬鹿じゃねーの? こっちは3人だっつーの!」

俺は黙ったまま上着を脱ぎ、アイツの振るえる腕にそっとかける。アイツは俺のほうを見ようともしなかった。Yシャツの袖を捲り上げると、戦闘態勢だ。
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