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Only you……
第9章 麻都 5
漆黒のボディに金の装飾――霊柩車が会場に現れ棺の蓋が打ち付けられた。透真は冷たい体に公衆の面前で口付けを交わし2度目のプロポーズをした。「これからもよろしく」死は大きいが、障害ではないらしい。
透真が遺影を、俺と明が骨壷を、そしてりんが位牌を持ち霊柩車に乗り込む。他のものたちはレンタルしたバスに分乗して火葬場へ向かう。車の揺れからおっさんを守るように明は壷を抱いていた。
火葬場に着き最後に顔を確認して熱い中へと導かれる。透真の優しい表情。りんは腕を組み、俺は明の手を握り締めていた。
昼食の後骨を壷に収める。おっさんの骨は脆く燃え尽きている部分が殆どだった。残ったところには花の色がつき、赤、青、黄と体を飾っていた。砕きながら全てを壷に収め終えると会場にしていた公園へ戻る。片付けをして、死を悲しんで。
「貴正の部屋の片付けは、僕がするから」
それは遠まわしに「手伝わなくていい」と言っていた。大丈夫なのかと視線で訴える。
「1人で片付けたいんだ。休みを貰うことになるけど」
「それは心配するなよ。んじゃ、任せたわ」
バシッと背を叩くと透真はよろけた。ははっと笑い、旅立ちの儀式は終わった。