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Only you……
第9章 麻都 5
「明ぁ、結婚式何着る?」
「はぁ?」
疑問を疑問で返されむっとした。なので再度同じ質問。
「だから! 結婚式の明の服だよ! ドレス着てみる? それともスーツでいく?」
怪訝に眉根を寄せ、睨みつけるかのように明は俺を見ていた。きっと話の流れがつかめていないのだ。突然話を振ったのだから無理もないだろうが。
「式って……何?」
素朴な疑問が返ってきた。
「結婚するための式が結婚式だろ」
俺は至極真面目な顔で言葉を返してやる。「違うって」と唸り声を上げながら明が言った。
「誰が、いつ、どこで、なんで、そんな式挙げるのさ!」
「俺と明が、2週間後に、会社で、愛を誓うアーンド社長就任のために、式を挙げます」
俺は腰に手を当てリビングに仁王立ちしながら早口に捲くし立てた。
明は目眩を感じたかのように額に手を当てる。
「ちなみにおっさんはウエディングドレス着たらしいよ」
あの平均並みの身長にドレスを纏っている姿を想像すると、少し――否かなり変だったが、当人達は満足していたらしい。
「で、オレにスカートを求めるのか?」
俺を軽蔑するような目で見てくる。
「それでもいいけど、シャツの合間から見える肌とか首元とかもそそるからなぁ……」
唇の端を舐めてみたりすれば、ますます明は引いていった。顔を青くして小刻みに首を左右に振っている。
「い、嫌だ嫌だ! スカートなんか穿かないからな!」
「えぇー!! ケチっ」
明はダッシュで寝室に逃げ込んでしまった。
佐伯自動車では社長就任は結婚式と決まっている。会社の中で式を挙げ、その瞬間からはい社長って感じだ。明がどんなに拒否しようが、式は執り行わなくてはならない。
「指輪もどうしよっかなぁ」
独り呟いてみる。
前に渡したのはエンゲージリングで、式でウェディングリングを渡すつもりだ。どうせならこの世に2つとないオリジナルにしたかった。
デザイナーに相談しよう。
そうしよう。