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Only you……
第9章 麻都 5
そうは言っても俺はしょっちゅう邪魔に行った。その度に明は顔を真っ赤にして怒った。
その顔さえも可愛いんだから、それは罪だろ。
食卓テーブルに鮮やかな料理が並ぶ。俺は2人分の箸を並べ席についた。
「いただきます」
「どうぞ」
肉じゃがは醤油と砂糖が完璧な割合で混ぜられていて絶妙な風味を醸し出していた。1口サイズの芋を放り込みほくほくと味わう。至福のひと時に顔が緩みっぱなしだ。
「あ、そうだ」
俺は思い出したように顔を上げた。
明は味噌汁を啜っていた。
「式の衣装だけど……」
「嫌だって言ってるだろ」
急に不機嫌になり口を尖らせた。
「別にドレス着ろなんて言わねぇよ」
その言葉に少し顔を上げる。疑うような視線を俺に向け明は箸を置いた。どうやら真面目に話す気になったらしい。
「一応社長就任パーティーも兼ねているから、業界の人間も来るはずだ」
「業界!?」
「披露宴だけだよ。移動して会社より大きな会場でやるから」
「……」
ますます眉根を寄せて明は俯いてしまった。
嫌がる気持ちは分る。できることならば嫌がることはさせたくないし、したくない。しかしこれは仕事の一環でもあるので避けることは出来ない。苦しいが参加してもらうしかないのだ。
「……ごめんな? いやなこと頼んで」
席を立ち明の横に膝をつくと、苦笑いを浮かべて話し掛けた。
「でもこれが俺の仕事だから。これからも色んなことに巻き込むよ――」