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Only you……
第9章 麻都 5

 ふわりっ――。

明が俺の胸に飛び込んできた。

危うくバランスを崩して倒れるところだった。

痙攣を起こしてひくつく背中をゆっくりとさする。腕の中で嗚咽が漏れ始め、さらに抱きしめるのに力を込めた。

「うっ、く……ひっ、ごめっん。オレ……っ」

「はいはい。大丈夫だよ」

頬擦りをする。柔らかな肌に触れそっと唇を寄せる。

俺が明を追い詰めたのだろうか。俺は明を支えていけるのだろうか。――否、そんなことを考えても答えなど出ないだろう。

震えが収まり漏れていた声も静かになった。そして、ガバッと涙で汚れた顔を上げる。

「麻都が、見たいなら、ドレスでも……いいよ」

濡れた瞳にキスを降らせる。睫がふるふると揺れる。

「そういうのに囚われるのは止めようか」

「えっ?」

両腕で明を抱え上げると笑顔が零れ落ちる。

「もっと枠に囚われないようにしようか。そんな偏見いらないだろ?」

ドレスでも燕尾服でもない、もっと明を彩れるようなものを――。



「これでいかがでしょうか?」

マネキンに着せられた純白の服。明のためだけに作らせた特注品はキラキラと眩しかった。

隣で目を細めている明。

「これを……オレが」

「そう。明のために」

恐る恐る手を触れその感触を確かめる。

振り返った明の顔には照れと喜びが込められているようだった。

「麻都っ、何か楽しみだな!」
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