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Only you……
第9章 麻都 5
右手を明の後頭部の方へ回し髪をかき混ぜながら角度を変えて口付ける。膝の上で握られていた明の両手は次第に緩み、俺の胸へと当てられた。その手をそっと守るように俺の手も重ねる。
柔らかな唇を舌で軽くなぞる。堪らず明が口内へ誘うように唇を割るが、はぐらかしながら顔を離す。名残惜しそうなその表情がいいのだ。
「緊張は解れましたか? 王子様」
「……ん」
ぱたりと俺の胸へと倒れてくるとそのまま耳を押し当てている。俺は背中をさすりながら、明の髪から漏れる整髪料の香に酔っていた。
「心臓の音がする..」
「そりゃ、生きてますから」
「分かってる。音がする」
俺の心音に安心したのかふっと明が肩の力を抜いた。どうやら俺のキスの魔法は効果があったらしい。
「こらこら、あんまりくっつくなよ。服が乱れたらみんなに怪しまれるからな」
「なっ!!」
にやにやしながらそんなことを言うと、大慌てで離れてゆく。顔を真っ赤にしながら。
「節操無しめっ」
「え、俺まだ何もしてないんですけど!?」
「何かするつもりかよ!! 危ないやつだ」
シートの端まで逃げると、明は自分の身を守るように両手で自分を抱きしめた。そんな姿に俺は苦笑する。
俺が笑うと明は怒るが、そんなふうに軽い感じで接しているのも気持ちがいい。いつもみたいにべったり愛を語らうのも悪くないけど。