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Only you……
第9章 麻都 5
キキィ……――。
歓声のような声を上げて、車は目的の場所まで辿り着いた。
俺は明の手をとりながら披露宴会場までエスコートしてゆくのだ。外には一部の業界関係のカメラマンや記者なんかも集まっていて、フラッシュやシャッター音が聞こえてくる。男同士。世間から見れば可笑しな組み合わせなわけで、いろんな方面からは盛んに叩かれているがそんなことは関係ない。一番大事なのは俺がどうしたいかで、誰かにどうみられているかではない。
俺が明を好きで、明も俺を好いてくれている。ただそれだけのこと。だからどうしたこともないし、どうすることもない。
ただそれだけのこと。
止めどなく質問を投げかけられるが、俺は笑顔で「私は彼と一生を共にするつもりなんで」と言い、人並みを掻き分けて会場へ進む。中は既に俺たちの到着を待ちわびていたようだ。苦笑いを浮かべている者や祝いの言葉をかけてくれる者、複雑な表情の者まで様々で、そこには俺たちのような関係がいかに世間一般には馴染んでいないかということが見て取れた。
仕方ない。その一言で終えてしまうつもりはないが、今は仕方がないことなのだろう。いずれみんなに分かってもらえるといい。――否、理解を求めるために、佐伯自動車は妙な伝統下で営業を続けているのだ。
「悪いけど、ちょっと挨拶に回ってくるよ」
「え、あ、うん……」
明の不安そうな表情が見えたが、その後ろに透真の姿が確認できたので場を後にした。俺が明から離れると、すぐに数人の重役クラスの人間が近寄ってくる。会釈をすると型にはまった言葉を交わす。