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Only you……
第9章 麻都 5
盛大な披露宴も終幕を迎え、片付けを業者に任せると明の元へ向かう。透真と明の姿はさっきまでと同じ場所にあった。俺は小走りにベンチへ駆け寄り声をかけようとした――。
透真が口元に人差し指を当てる。俺はその仕草に首を傾げたが、明の頭が透真の肩にもたれかかり瞳を閉じていたので慌てて言葉を飲み込んだ。眠ってしまったらしい。
透真の肩に身を預けていることに軽い嫉妬心が芽生えたが、押さえ込むと、小声で話し掛けた。
「お疲れ。今日はありがとうな」
「どういたしまして」
明の横顔に視線を移し様子を窺う。帰りたいが、起こすのもかわいそうなくらいにぐっすり眠っていた。
「昨日の夜は緊張して眠れなかったんじゃないかな? ちょっと話してたらうとうとし始めたよ」
規則正しい寝息が聞こえ、俺は目を細めた。
いつまでもこんなベンチの上で寝ていては寝違えそうなので、明を横抱きにすると俺は更衣室で着替えを済ませた。明の衣装も代えるとタクシーを呼んだ。後部座席を陣取ると眠ったままの明を抱き寄せる。多少揺すっても起きないところをみると、相当疲れていたことが窺える。
俺はこんな些細なことにも気付けていなかったのだ。
軽い後悔をかみ締めながら、一方通行ではない関係を気付いていこうと誓う。あの偽神父の前で誓ったように。