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Only you……
第9章 麻都 5
「なぁ、分かってる?」
大量のアイスクリームを掻き込むと、明はベッドへダイブしまどろみ始めた。俺は慌てて駆け寄り囁くが、あまり相手にされていないようだ。あれだけ寝ていたのにまだ寝るというのか。
「明っ!!」
ぐわんぐわんと揺さぶると、明は不機嫌そうな顔をしながら目を開いた。
「今日は新婚初夜なんだよ……」
明が不意に両手を伸ばし、俺の首に絡めてくる。俺は溜息を付きながらそれに応じた。明からそんなふうにキスしてくるのは珍しく、俺は夢中になってゆく。呼吸を繋ぐために軽く唇を離し、また直ぐに触れさせる。甘いアイスクリームの味がした。
「ここの窓から海が見えるんだ」
明の肩を支えながら窓辺へと促す。さっきよりも随分としっかりとした足取りに戻っていたので、俺の支えは不要だったかもしれない。
締め切っていたカーテンをスイッチ1つで開ける。ウィーンと唸るような音と共にゆっくりと巨大な窓を覆っていたカーテンが開いてゆく。それと同時に、俺は部屋のライトを落とした。
明は驚いたように窓へ張り付いた。
そこには感嘆の吐息が漏れるほどに豪華な大海原が広がっていた。昼間は真っ青に見える海は夜の闇が反射して黒っぽく揺れている。キラキラと輝く肥えた三日月が海面に移り巨大なくらげが漂っているようにも見える。
吸い込まれてしまいそうな、そんな景色。飛び込んでしまいたい衝動に駆られる。
「綺麗だ……」
他に言葉が思いつかないのか、明は躊躇った後にそう呟いた。額をひんやりと冷たい窓へ押し付け海と空とくらげを見つめている。
俺は雰囲気を壊さないようにそっと明の腰に両腕を回した。明の背中と俺の腹がぴったりとくっ付き、じんわりと温もりを感じながら、シャンプーの香りに酔いながら、首筋にキスを降らせる。