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Only you……
第2章 明 1
また懐かしい夢をみた。
オレが初めて街で売りをした日。どうでもいい、むしろ忘れたいくらいの昔。
あれは確か、オレが14の時だったな、などとぼーっとした頭で考える。施設を飛び出して、学校を逃げ出した先はラブホ。オヤジや、若者、色々いた。テーブルに札束積ませて、1発5万、1時間5万。やつらはほいほい簡単に金を積んだ。それを見てオレは安心した。
しばらく食べ物には困らない、と。
もういいや。
ガンガンする頭を振り、考えを振り払おうとする。考えたって、思い出したってしかたない。だって、カコはもう変わらない。そして、オレの場合は未来も……変わりそうも無い。
もういいや。
ここで世話になるのも。オレのボロアパートへ帰ろう。どんなに帰りたくなくても、やっぱりあそこが今はオレの家だし。だるくて大変だけど、とりあえずタクシーでも拾って、誰にも見つからないように、今日は客とらないで帰ろう。
ずるずると体を引きずって、なんとかベッドを抜け出した。廊下に誰もいないことを確認して、静かに玄関へ向かう。ピカピカに磨かれた馬鹿みたいに高い革靴がオレを待っていた。
オレが貧乏だってばれないように、金を積むのに足元をみられないように、オレはいつも高級品に身を包んでいた。
靴を履こう。ここにはおさらばしよう。なんだか長居したけど、もうここへくるのも止めよう。金をいっぱいくれるから結構気に入っていたんだけどなー。
なんか、悲しくなってきた。なんでだろ? 最近麻都に世話になってばかりだったからかな? ずっと独りで生きてきたのに、突然人と触れ合って。馬鹿だな、オレ。そうやって何度も騙されてきたのに、まだ諦められないんだ。
――愛されることを、
オレはまだ求めるの? ――
「……おいっ! 明!!」
ぐいと腕を掴まれて、勢いで体が反転した。掴まれた腕が痛かった。
「どこ行くんだよ! ……って、泣いてんの?」
「……ぇ?」
気が付くと、オレは涙を流していた。
なんで? どうして? 分からない。
けど、なんだか悲しかった。体が、オレの体が求められているだけなのに。オレ自身なんて見られてないのに。優しさという名の刃は、オレには鋭すぎる。もう先端恐怖症なのかも。