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Only you……
第2章 明 1

オレがそんな皮肉を考えているうちに、いつの間にかオレは麻都の腕の中にいた。最近多いな、こういうシチュエーション。――でも、今はいいか。これが最後、最後にしなくちゃ。

「行くなよ……。黙って俺の前からいなくなるなよ……」

弱々しい声で囁いた麻都は、痛々しいほどで、なんだかオレがすごい悪者みたいな気がしてくる。

そのまま、体を麻都に預けた。一度麻都はオレを見たようだったけど、オレは目を合わせなかった。そして優しく抱きしめられていた。

どれくらい経っただろう。オレはゆっくりと麻都を引き離し、「じゃあ」と言って背を向けた。もう最後、これからここには――来ない。

「ねぇ、何で体売ってんの?」

去り際のオレに麻都は尋ねた。なぜって?

「買う奴がいるから」

「そうじゃなくて。……あのさ、もしかして、金に困ってる?」

唐突にそう聞いてきた。だったら何だって言うんだ?

「どうして?」

否定もしないが、肯定もしない。実際はその通りなのだが……。

「あー、えっと、良かったら」

じれったい。さっさと言ってくれ。じゃなきゃオレ、さっき決意したこと水に流しそう。もう二度とここへは来ないってやつを。

「俺と住まない?」

「…………は?」

オレの味噌にクエスチョンマークが刻まれた。ドウイウイミ?? オレの聞き違いか? なんか今、一緒に住もうみたいなことを言われた気がしたんだけど。

「ここで――ここじゃなくてもいいけど、一緒に住めば金には困らない。俺、金回りはいいし。そしたら売り、しなくていいだろ?」

なんで、あんたに面倒みてもらわなきゃいけないのですか? 混乱してきた。一緒に住もうだって?そんなこと言われてもなぁ。

「この前みたいな奴等からも守ってやる。俺は明を守るから!」

あいつらから守ってくれる? ほんとに?

「なんであんたが、そんなに他人の心配するワケ? 同情ならいらないよ」

「同情じゃない!!」

麻都の叫びが響き、その後は静寂が訪れた。

「誰にでも心配するわけじゃない。明だから、俺は明が心配なんだよ。同情なんかじゃない」

一呼吸置いて、続けた。


「愛情だよ」
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