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Only you……
第2章 明 1

「……んっ」

吐息が漏れる。でもそれは、特別な快感からくるものではなく、オレの演技力がそうさせただけだ。

涙が出てきた。でもそれは、これからおとずれる感覚を予想したものではなく、後悔と寂しさがそうさせただけだ。

体の震えは依然として止まらない。ばれるわけにはいかないのに、今日に限ってどうして?

麻都の手が、オレの手とつながる。指を絡ませて、しっかりと。

そんなことしたら、震えがばれちゃうじゃないか! どうしよう……。止まらない震え――もう痙攣といってもいいかもしれない。

吐息が嗚咽に変わろうとしたその時――。

麻都はオレを強く抱きしめた。

「ばーか。無理やり抱くかよ」

そう言いながら、麻都はオレの顔を自分の胸に押し付けた。吐息は完全に嗚咽に変わってしまった。涙が止まらない。ホント最近泣いてばかり。

「最初からさ、体震えてたじゃん。声だって。気付かなかったらマジで抱いてたかも」

ははっと笑った麻都の顔は、綺麗で、オレは麻都の胸にしっかりと抱きついた。

「よ~しよし。泣くなよ」

優しくオレの髪を撫でる手が妙に愛しくて、麻都につりあうものを何も持たないオレは、自分の空っぽさにまた涙を流す。

「今度、こんなことしたら嫌がっても抱くからな! もうするなよ」

なんでこんなに他人に優しくできるんだろう。オレには真似できない。ずっと独りで生きてきたし、周りは敵か金づるのどちらかだった。体も心も傷だらけで、ぼろぼろで。
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