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Only you……
第2章 明 1
「まず一軒目!!」
そう言われて、とあるマンションの前で降ろされた。そこではすでに、不動産屋の男が待っていた。
そこは流行りのデザイナーズマンションで、明るくおしゃれな感じがした。それがオレを拒否しているようで、なんだか悲しくなる。こんな建物にまでオレの存在が否定されている気がした。
そんなオレの様子に気がついたからなのか、それとも単に気に入らなかったのか――オレは後者の理由だと思うが――麻都はそのマンションを後にした。
次は今住んでいるところに良く似ていた。閑静な住宅街、というような雰囲気。引っ越すのには気分転換も含まれているわけだから、ここはあまり適さない。
その次は全体が落ち着いていて、オレは結構気に入った。でもその感想は、居候のオレには言えなかった。言う必要もないか。オレは養ってもらってるだけだし。内装もそれなりに良かった。ただ、キッチンが小さいのが問題だ。麻都もそれに気付き、またこの場を後にした。
そんな風に、色々な場所を巡り、8軒目でようやく気に入るところが見つかった。そこは若い女の一人暮らしに最適で、セキュリティーが万全。夜もあたりに街頭が多く、安全だ。
店なんかも近くにあり、コンビニも駅も不自由しないところだった。オレが問題としていたキッチンも、満足するほどに広かった。
「これくらい広かったら、旨い料理が作れるかい?」
「味に広さは関係ないと思うけど」
鋭くつっこむ。広さは料理中の快適度に関係しているだけだろう。
すぐに契約し、その日のうちに引っ越す。荷物は殆どなかったので、荷造りはすぐに終わった。距離は多少あったが、その日のうちに往復するのが困難なほどではない。麻都の希望通り、会社にも近かった。
――といっても、オレは麻都の会社の場所なんかしらない。それどころか、職業も知らない。前に秘書とか言ってたし、金回りもいいから、きっとそれなりの地位だとは思うけど……。