この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Only you……
第1章 麻都 1

居間に戻ると煙草に火を点ける。自分でも驚いたが、ライターを持つ手が震えていた。俺はかなり動揺している。

どうしたものか。

色々と考えがめぐった。良くないことばかりが。その反面、俺はほんの少し、嬉しいというふうにも感じていた。明とは金のうえの関係しかないと思っていたのに、頼ってくれたのだ。俺の所へ来たというのは、そういうことだろう。

皮肉に微笑んでみた。自分に対する皮肉だ。

吸っていた煙草を灰皿へ捨てると、キッチンへ向かう。俺は明の為に、スープを作ることにした――インスタントだけど。


「何してんだよ」

すっかり枯れてしまった声で明は俺に尋ねた。俺は、ダンボール箱の山をひっくり返して、中身をあさっていた。

「何って、薬を探してんの。痛いだろ?」

「……」

明は、俯いたまま動かなかった。

「ソファーでも座ってろよ。スープ作ったから、飲んでな」

明と目が合った。俺は優しく微笑んだ。アイツが――明が涙を堪えていたから。

明が居間へ消えていったのを見届けてから、俺は再び傷薬を探しはじめた。

つい先日、部屋の大掃除をしたばかり。その時のゴミがこのダンボール箱たちの中身だった。この中のどれかに例のモノが入っているのだが、どれだったかなんて全く覚えていない。

「あった」

前に火傷をして病院に行ったときにもらった傷薬だ。切り傷にも擦り傷にも効くだろう。……多分。

居間へ行ってみると、明がソファーの上で膝を抱えていた。テーブルの上のスープには、全く手をつけていないようだ。

明は顔を伏せていた。そして、そのまま、小刻みに震えている。また泣いているのかも知れなかった。

「薬……背中出せよ」

明は声をかけても動こうとしないので、俺は隣に座り、勝手に明のシャツをめくった。それから、チューブの蓋を開け薬を出す。

傷の一つ一つはとても浅い、ちょっとしたものだった。しかし、この数は半端じゃない。両手の指を曲げ、更にのばしても足りないくらいだ。体にはいくつか、打ち身のようなものもあった。何かに殴られたような、ぶつけたような。

「……なんで」

薬を片付けようかと立ち上がったとき、不意に明が呟いた。

「なんであんたは、オレなんかに優しくできるんだよ……」

「妙なこときくね。まぁ、惚れた弱みってやつかな」

「……! あんたもあいつらの仲間なんだろ!!」
/177ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ