この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Only you……
第4章 明 2
オレはふらりと外へ出た。1人で外出するも3ヶ月ぶり。そして、売り目的以外で外出するのはもう10年以上ぶりかもしれない。
オレを襲うやつらに怯えるよりも、もっと怖いと思うものが今ではあるので、外に出ることにはもう抵抗はなかった。ついこの前までは外出なんてできなかったし、麻都がいないのに外に出ようなんて少しも思わなかった。
――それが、今ではどうだ?
街へと向かう。殆ど無意識に。人の多いところでなら、自分の孤独感を埋められる気がした。
ところが、街はバレンタイン一色で、チョコレートを買う女の子やカップルばかりで、少しも気を紛らわせることができなかった。
うつむいたまま歩く街は賑やかで――賑やか過ぎで、オレを一層浮き立たせた。
どんっ――。
「うぁっ」
「つっ」
うつむいたまま歩いていたせいで、思い切りぶつかってしまった。謝ろうと思い顔を上げると、その見覚えのある顔にオレは目を見開いた。
「明……」
その声に、オレの体は硬くなる。そして、気がつくと、その男から逃げるために走り出していた。
「待てよ! 捜したんだぜぇ?」
男はもちろん追ってきた。そして最近食欲がなく、益々痩せてきていたオレが逃げ切れるわけもなく、街の外れで追いつかれてしまった。
「ひっ」
腕を強く掴まれ、引きずるように連れて行かれる。このあとに起こることは容易く想像できた。
人気のない倉庫のような場所。暗く、誰にも気付かれることはないだろう。誰も助けてはくれないだろう。
「捜したんだぜぇ……。勝手にいなくなるからよぅ」
気持ちの悪い笑みを浮かべるその男は、オレが麻都のところに転がり込むきっかけになった――オレを強姦した男に間違いなかった。ただその時と違うのは、相手が1人で、場所が倉庫なことくらい。
「くくくく、何怯えてるんだよ」
低く笑い、ゆっくりとオレの手首を縛ってゆく。オレは震えるだけで、何の抵抗もできなかった。
「今度は逃げられると思うなよ」
オレの髪をぐいと引っ張り、耳元で囁いた。
――今度は逃げられると思うなよ。
――逃げられると思うなよ。
――逃がすものか。
そして夜は更けてゆくのだ。