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Only you……
第4章 明 2
「……くぅっ」
倉庫の中に落ちていたロープで縛られた手足は、動くたびにズキズキと痛んだ。オレは拘束されたまま、冷え切った床の上に倒れていた。
こんな所にオレを連れ込んだ男はというと、携帯電話を持ち出して電話をかけていた。
――くそっ! このままじゃ、またアイツに……っ!
何とか逃げようと、色々考えるが、教養のないオレの頭では考えつかなかった。
動くたびにきつくなってゆくロープ。SMなんかによく用いられる縛り方だった。オレにはそんな性癖はないし、客に求められても拒否してきていたが、こんなところでMデビューしなくてはいけないとは思わなかった。
「そう……マジだって。うん、早くな。……ハハハ、待っててやるって」
電話中の男は、楽しげに話していた。
逃げるなら今がチャンス。そんなの分かってる。でも起き上がることもできずに、オレは転がっていた。
半開きになったままの倉庫の入り口からは、月明かりが差し込んでいた。今夜の三日月は綺麗だ。
電話を終えた男は、オレの方を見ていやらしく笑った。その様子にオレの全身で鳥肌がたつ。
「今ねぇ、明と遊びたい奴がくるからもうちょっと待ってな?」
くすくすと笑いながら、歩み寄ってくる。
転がっていたオレの髪を掴み無理やり座らせると、強引に口付けようとしてきた――が、寸前でかわす。
パンッ――。
オレの頬を平手が打った。
その勢いにまた床の上へと倒れこむ。そして男は馬乗りになってオレの襟首を掴んだ。
「ふざけんなよ? もう逃がさないって言ったよなぁ」
オレを前後に激しく揺する。何度か地面に頭を打った。そのたびに目眩が襲う。
それでもオレは、意識を飛ばすことが出来なかった。――いや、飛ばさないように堪えた。そんなことをしてしまえば、そのあと我が身になにが起きても逃げられない。