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Only you……
第4章 明 2
それは麻都のコートで、その上から麻都自身がオレを抱きしめていた。
「ごめん……謝って済む問題じゃない。けど……」
きつく目を閉じたまま、麻都は何度も“ごめん”と呟いた。
「なんで、謝る……? オレが、勝、手に出たのに……」
麻都の腕の中で、オレはこんな状態なのにほっとしていた。久しぶりに感じる麻都。この匂いも、この温度も、この力強さも全て。
自然と体の力が抜け、麻都の胸に寄りかかった。そんなオレを、さらに強く麻都は抱きしめた。
「うわあああぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突然上がった奇声に麻都が振り向くほどの余裕はなかった。ただ、オレが気付いた時には、麻都の腕に刃渡り30cmほどのナイフが突き刺さっていた。
後ろには、さっき麻都が殴り飛ばした男が不気味に微笑んでいた。
「くっ……」
「あ、さ……血が」
麻都のスーツに鮮血が広がってゆく。それは鮮やかな赤から、だんだん黒へと変わっていく。
麻都の額に冷や汗が流れた。
「あいつ、マジやべぇよ」
「ひぃっ」
他の男たちも動揺し始める。
しかし、オレはそんな周りの様子なんかより、麻都がオレのせいで負った怪我が心配で頭の中はぐちゃぐちゃだった。