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Only you……
第5章 麻都 3

明の体を這い回るような生々しい傷跡。それは切り傷に始まり、火傷は痣、そして肉がえぐられて凹んでいる部分さえもあった。

俺は驚きのあまり、言葉を発することを忘れていた。目も口も開いたまま、呆然と明の上半身を見詰めていた。

そんな俺を見て、明は悲しそうに「ハハハッ……」っと笑った。

「ごめん、オレ重たいやつだな……」

再びシャツに袖を通そうとした明。

俺は無意識のうちに明の傷に手を伸ばしていた。そっと触れるとザラザラとした感じが指先から脳へと伝わってゆく。そしてゆっくりとそこに舌を這わせた。

――何が明に……?

俺にはどうしようもなかったことだろう。きっとこの傷は俺と明が出会う以前のもの。それでも俺は自分が許せなかった。過去に戻って自分自身を殴り飛ばしたかった。

早く明を救いに行け、と。

さっきとは別の痣にキスをする。俺の想いを込めて。

見上げた明の瞳には汚れを知らない純水が溜まっていた。

俺はそっと明の手を握り、瞳に口付ける。明はそっと、目を閉じていた。

「……話、聞いてくれる?」

同意を求めるように尋ねる明。俺は返事の変わりに明の額に俺の額をコツンとぶつけてやった。

明がにっこりと笑い、俺の胸はきゅっと痛んだ。
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