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Only you……
第5章 麻都 3
――……うん。俺も、そんな中の最低な1人だな。
――そんな風に言わないで? あの時は確かにそう思ってた。でも、あそこで出会わなければ、きっとオレはもっと苦しんだ。もっと周りを恨んで、もっともっと……。
――ごめん、出会ってなかったら、今の俺たちはなかったよな? あの出会いが良かったとはいえないけど、そのおかげで、俺は明に惚れることが出来た。
――へへっ。そうだよ、そんななかで、麻都だけはセックス以外も求めてきたんだ。オレを外に連れ出したやつなんて、麻都だけだよ。
――必死だったよ。なんとか笑わせたいと思ってもう。せっかく綺麗なんだから、笑顔も素敵だろうなぁとね。
――ふふふっ。調子いいんだから。でも、ほんとに救われたと思ってる。
明の過去の概要はそんな感じだった。本当はもっと、話すことが出来ないよな辛いことだってあったんじゃないかと思う。でも、それでも、俺に心のうちを話してくれたことは凄く嬉しかった。
「麻都……」
俺の腕の中で、聞こえるか聞こえないかの小さな声で、明は俺を呼んだ。
「麻都」
呼んだ――というよりは唱えたといった方が正しいかもしれない。まるで何かの呪文のように、何度も何度も呼んだ。
「明」
俺は抱きしめる腕に力を込める。もう二度と、手放すまいと。