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Only you……
第5章 麻都 3
「ただいまぁ~」
居間に向かって叫べば、ぱたぱたとかけてくる足音がする。そして数秒後には笑顔の明が俺を迎えてくれる。ほんの数ヶ月前までは、こんなこと夢にも思わなかった。それが今では実現しているのだ。
「お、おかえりっ」
ひょっこり顔を出した明は妙に緊張した様子だった。いつもの笑顔もなんだかぎこちない。
「あれ??」
俺を見てから俺の周りに視線を這わせ、驚いたような声を上げる。
「お客さんは?」
「あぁ、近いから着替えてくるって」
明があからさまにほっとした表情を浮かべた。
「いやだったか? 誰かが来るの……」
俺は2人を呼んだことを早くも後悔し始めていた。
「そ、そうじゃなくて……なんか、緊張しちゃうから……」
そっと胸に手を当てて、呼吸を整えるような仕草を見せる。俺はそれを見てなんだか和やかな気分になる。
鞄を仕事部屋に置き、寝室で着替えを済ませた頃に、玄関のチャイムが鳴った。俺はインターホンで確認することもなく玄関を開放した。
「今晩は」
「うぃーす」
りんとおっさんが共に現れた。俺が中へと促し、2人はそれ従った。
居間からは、もう腹を刺激するのに十分な香りが漂ってきている。
――今晩は楽しくなりそうだ。
そんな予感を胸に秘め、俺は居間のノブを回した。
居間のドアを開ければ、唾液の分泌が活発になるほどのいい香りが体全体を包んだ。テーブルの上には俺が思っていたよりもはるかに極上の料理がキラキラと眩しかった。
「い、いらっしゃいませっ」
緊張のせいか、顔を赤く染めた明がぺこりと頭を下げた。水色のエプロンがふわりと揺れる。
そんな明に、おっさんは無言ですたすたと歩み寄ると、顎を掴み上を向かせた。俺が何をするんだと間に入る暇もなかった。そしてそのままじっと明の顔を見つめると、パっと手を離した。
「な、なに……」
唖然とする明。