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Only you……
第5章 麻都 3
おっさんは俺のほうに踵を返すと、上着を無理やり持たせさっさと席についてた。
「腹減ったぁ!! ほら、りんも早く席につけ」
「はい」
俺と明が立ち尽くす中、お客のはずの二人は勝手に食事を始めていた。一体今日はなんのために2人を招待したのだろうか。
テーブルを飾っていた料理も底をつきはじめ、だんだんと酒の量が増えてゆく。明は手を付けようとしないが、おっさんとりんはワインをぐびぐび飲んでいた。
「明……これ以上りんに飲ませないようにしてくれ」
「えっ?」
俺は明に囁きかけ、すっとおっさんのもとへと移動する。
明は戸惑っていたものの、すぐにりんのもとへと席を移った。
「りんさん、もうこれ以上は良くないですよ。控えた方が……」
「邪魔しらいれよぅ! 飲むのらからっ……」
もう遅すぎたようだ。もはや俺にも手をつけられない状況にあった。明は泣きそうな表情で、りんに縋っていた。
「おっさん……」
「ん? 何だ?」
ほんのり頬を染めたおっさんは、それなりに色っぽかった。俺には明が一番だから、そそられるほどではないけど……。
「あのさ、こんなこと言うのって変かもしれないけど」
俺は照れながら、言葉を紡いでゆく。
「……もうちょっと俺のこと頼ってもいいんだからな?」
するとおっさんはふっと笑い、視線をどこか遠くへと移した。そこには一体、何が映っているのだろうか。
「麻都……親にとってはな、子供はいくつになっても子供なんだよ」
俺は無言で見つめていた。
「だから、私が甘えるのは透真だけ……。子供にはいつまでも頼られていたいのさ」
真っ赤なワインの入ったグラスを揺らしながら呟くように言う。妙に切なくて、そしてはかなさを感じる。
――俺は、子供ってことね……。
そう思われているのなら、しかたがない。俺自身も、おっさんのことは父として想っているのだから。
「病院には……いずれ行くさ。もう長くはもたないし」
「そんなっ!」
おっさんの言葉が投げやりなものに感じて、俺は自然と声が大きくなっていた。
明が驚いてこっちを見た。